桐井さんのお宅(アパート)
シロアリ被害の定番は床下ですが、2階を含めた全ての居室で水回りの設備の多いアパートでは2階、3階以上の被害も多いです。
床下よりも高い位置に巣を作ることもあれば、イエシロアリによって床下から侵食を進めて2階、3階、壁などに活動範囲を広げることもあります。
賃貸用のアパートだと居住者から指摘のあった以上は修繕など対処しないといけません。
築年数の古くて損傷の大きい場合は建て替えを検討するべきですが、アパートの場合は既存の入居者の問題もあり難しいことが多いです。
2階の床と壁にシロアリ被害が見つかった古いアパートの事例をご覧ください。
広島県・桐井さんのお宅(2階建てアパート)のケース
築40年程の木造2階建てで総戸数10戸・8部屋に入居のあるアパートを運営していましたが、近年では古くなったことで家賃が安くなったりリフォームをしたりで家賃収入は落ち込んでいました。
5年以内を目安に建て替えを検討しようと考えていたところ、2階に住む住人の方から床が軋むという報告を受けたため、すぐに軋む床を調査しました。
確認したところ、内部はシロアリの食害によって完全に腐りかけていて、周辺の壁にもシロアリの食害を確認しました。
リフォームを前提にした工務店や建て替えを前提にしたハウスメーカーに複数相談した結果、費用は高額になりますが建て替えをすることになりました。
近い将来建て替えの必要だったアパートですが、突然の出来事でシロアリ被害の大きいこともあって入居者にとりあえず2~3年はこのまま住むように交渉することもできません。
結果的に入居のあった8部屋への退去費用で600万円ほどかかってしまいました。
入居して間もない方のいたことや、クレーマー体質の方から上乗せ交渉を受けたことで退去費用の出費は想像以上でした。
こんな大きな出費になるのであれば、事前に検査を受けて計画的な建て替えをしておくべきであったと、今では後悔しています。
居住中の家や貸家ではなく複数の部屋のあるアパートの場合は、修繕するにも建て替えするにも入居者への配慮が求められます。
築年数の新しい場合は軽微なシロアリ被害程度なら賃貸入居者を守るための法律で建て替えの認められないケースもありますが、桐井さんのアパートは床だけではなく壁にも被害の及んでいたことや築40年の古いアパートだったため、建て替えをする上で問題はありません。
しかし全ての入居者の更新時期を待つ時間の猶予はなく、早い段階で建て替えの必要な状況になり、入居者への退去費用が想像以上の出費になってしまったようです。
退去費用の目安
法律によって具体的なルールはないですが、入居者へ対して引越代と新しい入居先の敷金・礼金等の費用を補填するのが一般的であり、一戸あたりの退去費用の目安は50万円から100万円が相場となります。
今回のケースでは、築40年ということもあり一戸あたりの家賃は5~6万円程度でしたが、大家都合の退去だったので50万円程度では納得しない入居者も複数出てきてしまったようです。
2~3年前から告知して更新時に契約を切る通知をしておけば状況は変わるのですが、シロアリ被害が深刻で指摘のあった家だけ退去させても住民同士で噂が広まってしまい、結果的に他のトラブルが発生するリスクがあります。
定期的な検査が大切
アパート経営を行う場合、深刻なシロアリ被害を誤魔化して先送りにするのではなく、退去費用の高額になることを踏まえて建て替え計画を立てないといけません。
最低限の修繕で対処する方法もありますが、古いアパートで家賃の下がっている中で大きな修繕費用をかけるのは将来のことを考えても得策ではないので桐井さんが早期建て替えしたのは、致し方ない英断だと言えます。
強いて言うのであれば、退去費用は定期的な検査さえ行っていれば防げたコストであると言えますので、アパート経営を行う以上、シロアリ被害は一つのリスクとして考えておくべきだったと考えます。
アパート経営を行っている方は、毎年定期的にメンテナンスを受ける事を強くお奨め致します。